手紙

亡き父がお世話になったホスピスの看護婦さんから、手紙が届いた。

封筒の裏に、看護婦さんの名前を見出したとき、猛暑の7月の思い出が鮮明によみがえった。
8ヶ月になったばかりの息子をおんぶ紐で抱えて、バスで毎日通ったホスピスまでの道。
痩せこけて、頬骨がひどく目立つようになった父は、そこで人間らしい最期を迎えることができた。
大好きだったスポニチを毎日読んで、
母を独り占めにして、
何ヶ月ぶりかの風呂にゆっくり入り、
ベランダに出て外の空気を吸い、
床屋さんに髪を切りそろえてもらい、
その3日後、だんだん息が長くなり、
眠るようにこの世を去った。
家族に囲まれて。

看護婦さんの手紙を読んで、初めて、父がもういないことを認識した私は、
心の奥に埋めようのない穴を見つけて、肺のあたりがが重く絞めつけられた。


ことばの深み

文脈に適した「言う(dire)」の訳が見つからず、お世話になっている類語玉手箱で検索しました。
「述べる」「発言する」「発表する」「陳述する」「供述する」「弁じる」「切言する」「熱弁をふるう」
「言及する」「言い切る」「口をつく」「言い表す」「告げる」「露吐する」「いいつのる」「言い残す」
「口ごもる」「口を切る」「沈黙を破る」「開口一番」...
結局、「訴える」に落ち着きました。
文脈としては、観衆の涙を誘う感動的な発言に関するものなので、これで発言者の切実かつ誠実な
イメージが沸くような気がします。
小さなニュアンスを添えてくれることばを選択し、原文の文脈に隠れた深みを添えるということは、
翻訳の難しさであり、醍醐味でもあると感じます。


Ecoleの訳し方

最近、某観光地のホームページのローカライズを請け負いました。
翻訳しながら出会ったのは、メニューバーにあった「Ecole」の単語。
単純に訳せば「学校」「スクール」ですが、しっくりこない気がしたので、
その観光地のサイトに実際アクセスしてみました。
掲載してある写真を見て、やっと浮かんだ最適の訳語は『体験学習』。
原稿はワードにベタうちで、上書きの指示が出ていたので、画像はありません。
こうして該当のホームページを見たことで、サイトの色使いや、落ち着いた雰囲気にも触れ、
少なからず翻訳に反映することができました。


翻訳家心得その2

- 契約書、発注書などは、紙もしくはデータで2年以上管理保存しておきましょう。
これは公正取引委員会の「下請代金支払延滞等防止法」でも規定されています。

- 電話で取引が行われた場合、メールでその旨の詳細を送っていただくように
お願いしましょう(忘れないためにも、交渉内容の文書化は大切です)。

- アップデートな情報収集を怠らないようにしましょう(各種団体や連盟の会員になる、
同業者の集まる掲示板を参考にする、など)。

- 翻訳者も個人事業主。新規の会社との仕事の前に不安がある場合は、
「翻訳基本契約」を送付しましょう。契約書という形で明確にすることにより、
納品後の入金の問題や、責任問題など、多くのトラブルが解決します。
契約書ひな型

- 発注前に明確な仕事の内容を決めましょう。例えば翻訳以外に、
「用語集を作成して欲しい」「ページレイアウトをやって欲しい」
「原稿内の作表もやって欲しい」などの依頼があれば、仕事の規模によっては、
追加料金の対象となります。

- 翻訳会社が「ベタ打ちでお願いします」と言ったにも関わらず、ページレイアウトを
してしまうと、翻訳者にとっても翻訳会社にとっても無駄な時間を浪費しかねません。
例えば、些細なことですが、自動改行機能を使ってしまっただけでも、納品後にお客様が行う
ページレイアウト作業にも影響を及ぼしてしまうので、注意しましょう。


翻訳家心得その1

在宅で仕事ができる、世界各国の翻訳会社と取引ができる、自分の時間を有効に使える・・・
こうしたメリットもある在宅翻訳者ですが、それに伴ったトラブルも多発しています。
個人といえど、翻訳者を名乗る人は、自分の事業を個人で管理していることを自負し、
トラブルを招かない、しっかりとしたビジネスマナーを忘れてはいけません。
値段交渉、納期交渉・・・メールや電話で行われるこうした取引は、ビジネスの一環なのです。
また、自分を守ってくれる法規や団体の公開情報をしっかりと把握し、自立した翻訳者を目指しましょう。


ミニブログを始めました

翻訳や通訳にまつわる日ごろの小さなつぶやきです。
育児と仕事の両立にも触れられればと思います。