OL株の憂鬱

フランスリーグ・1で首位のOL(オリンピック・リヨネ)株が下がっている。私はホッと胸をなで下ろしている。

最近あまり変動のなかったADP(パリ空港社)株を売却して、OL株の購入を検討していたが、気がついたら一般公開予約の期間が終了していたからだ。しかし、そうこうしているうちにADPが今年度の新規大規模雇用を発表したようで、一気に信用買いが集まり、いつのまにか株価が跳ね上がっていた。

プチ投資しかしていないので、こういう経済情勢は全く把握していない。やれどこの会社が吸収合併されただの、イタリアのどこそこの企業と技術提携を組んだだの、そういう情報で株価が左右される。それが株にとってプラスの影響なのかどうかも良くわからない。同じセクターの他企業の経営状況なんかも間接的に株価の動きにリンクしてくるとなると、もう完全にお手上げである。

しかし、サッカークラブの株はちょっと違う。試合の結果だけで株価が動く。つまり、非常に判りやすいのだ。

2006年10月10日から11日の夜半にかけて、フランスのプロサッカーチームの株式市場入りを許可する法案が、フランス議会(下院)を通過した。これを受けてリヨンのオラス会長は、同月19日、クラブの早急な株式入りを表明。当時、第9節を終えていたリヨンは、第2節の対トゥールーズ戦を同点(1-1)で終えた以外、負けなしのパフォーマンスを披露しており、既に今季の優勝が囁かれていたのだった。その後のリヨンも向かうところフランス国内敵なしで、前半戦が終了した12月23日、16勝1敗2引分の驚異的な結果を残していた。記録更新、フランスリーグ6連覇、株価高騰・・・こんなシナリオになるのは、誰の目から見ても明らかだった。

しかし、その後がまずかった。株公開のタイミングが非常に悪すぎた。

2007年2月9日(金)にOLグループがひっそりと株式入りした時、王者リヨンは低迷していた。FWフレッジをはじめとした先発勢の怪我に加え、MFジュニーニョのFK不調も手伝って、2007年に入っての4節で一度も勝利していないという状況だった(第20節トゥールーズに0-2で敗戦、第21節ボルドーに1-2で敗戦、第22節ニースに1-1でスコアドロー、第23節トロワに0-1で敗戦)。

1株24ユーロで株式入りしたものの、株公開と同時に瞬間的に株価が上がった(+7.4%)だけで、その後はチーム同様低迷の一途を辿っている。

株式入り翌日の2月10日(土)、第24節の対ロリアン戦で、リヨンは後半戦初勝利(1-0)を飾った。しかし、これすら好材料にならなかった。むしろ、13位(当時)のロリアンに対し、やっとのこと勝利をもぎ取ったというパフォーマンスの悪さから、その10日後に迫っていた欧州CLの対ASローマ前半戦への不安要素の方が勝ってしまったのだ。第6節以降、国内リーグでひたすら首位を守り続けているにも関わらず、である。

続く第25節、対リール戦で、リヨンは相手ホームで更なる勝利を飾った(2-1)。しかし哀しいかな、株価は23.60ユーロで硬直したままだった。

そして3月6日(火)の欧州CL、対ASローマの後半戦で散々なパフォーマンスを見せてしまったリヨン。フレッジのひじ鉄レッドカード一発退場は、リヨンの株価にも流血大打撃を与えた。株価は13%以上暴落し、21.91ユーロに。チームにとっても、OLグループにとっても、最悪のシナリオとなってしまった。

この苦境を打開すべく、OLグループは3月12日、補足的に241,594株の売出し(初回と同じく1株24ユーロ)を決定した。これにより株による投資額を600万ユーロ弱アップさせることを目的とした。

しかし、補足的な株の売出しは、解決策にならなかった。補足株売出しの前日の3月11日(日)、第28節の対マルセイユ戦で、リヨンは宿敵マルセイユに1-1のスコアドローを期してしまったのだ。不運は続くものである。株価はとうとう20ユーロ台へ。おまけに、シーズン終了後の夏のメルカートで、ジュニーニョをはじめとする一部の主力選手が流出するのではという予測もあり、結局不安材料は募るばかりだ。

株価だけでなく、低迷するクラブの再起を願うリヨンは、3月31日に開催されたリーグカップ決勝(対ボルドー戦)に明暗を賭けた。すでにフランスリーグ・1の6連覇に王手をかけているリヨンだが、実は連覇記録の開始シーズンとなった2001/2002年シーズン以降を見ると、国内カップ戦で優勝をした経験がない。6連覇にリーグカップ優勝の花を添えることが、リヨン新記録達成、株価の持ち直しにつながる可能性があった。

しかし皮肉にも、試合終了1分前に決勝点を叩き込まれてしまった。

翌々日の4月2日(月)の株式市場では、OL株は20.10ユーロと20.50ユーロを激しく行き来しながら、右肩下がりとなった。4月7日(土)の第31節、対バロンシエンヌ戦(15位)をスコアレスドローで終えた現在、株価は20.16ユーロ。株式入りから実に16%の暴落だ。挙句の果てには、ウリエ監督の退任も囁かれる始末である。

唯一の好材料は、株の暴落にも関わらず、2010~2011年落成を目標とした“OLランド”(6万人収容の巨大スタジアムと、それに付随するエンターテイメント施設)の計画が進行していることだろう。

今季のフランスリーグでリヨンが優勝し、6連覇を飾るのはほとんど明白だ。酷なことに、王者リヨンにとって、この事実は株に何の影響も与えない。勝っても報われない。負けるどころか、スコアドローでも酷いしっぺ返しを食らう。OL株の憂鬱は、王者ならではの憂鬱なのだろう。